2011年5月3日火曜日

チェルノブイリ原発事故処理に毎年苦しむ国

チェルノブイリ原発事故から25年
ウクライナ(旧ソ連)が、原発事故後の処理に依然として苦しめられている。

被災住民や元作業員への直接的な健康被害や補償だけじゃない。
“原発事故後の処理”に必要な費用が莫大で、ウクライナ経済への深刻な負担になり続けているのだ。

チェルノブイリ原発事故から25年を迎えたことを受け、4月19日、ウクライナの首都キエフで国際会議が開催された。
「原発の処理費用」として、約5億5000万ユーロ(約660億円)が集められた。
原発事故を起こした4号機を覆ったコンクリートの老朽化を受け、資金はそれをさらに覆う巨大な“鉄棺”を建設するために利用される。
「福島原発での事故が、(資金拠出を求める)ウクライナの要求に各国を振り向かせた」とされるが、会議はそもそも7億4000万ユーロ(約890億円)の拠出を目指しており、各国の財政難のなか目標額には至らなかった。

事故を起こした原発の処理や、
被災住民への支援などにかかる費用は、
事故から四半世紀を経た今もウクライナ経済の負担になっている。

ウクライナのアザロフ首相は、事故によるウクライナの経済的損失は2015年までで、1800億ドル(約14兆7000億円)に達するとの見通しを示した。

閉鎖された原発を管理するため、
毎年6000万ドル(約49億円)を拠出。
現在も被災者約221万人が補償金を受け取っている。

原発事故後、拠出額は多い年で、ウクライナの国家予算の実に8~10%を占めていたという。
ウクライナは旧ソ連から独立後、価格自由化や国有企業私有化などの市場経済への移行を推し進めたが混乱。
08年の金融危機では通貨フリブナが暴落し、国際通貨基金(IMF)に資金援助を仰ぐに至った。
チェルノブイリ原発事故の処理がウクライナ経済に極めて重い負担となった。

政府は、事故処理に当たった作業員らへの支援策について、「資金不足」を理由に削減する動きを見せつつある。
ヤヌコビッチ大統領「過去に約束してきた被災者への補償継続は、政府の力を
超えてしまっている」
と語り、政府支援の継続が困難になったことを認めた。

日本では、福島第1原発の事故に対する被害補償額や原発の廃炉費用などの総額は、事故が現在も収束しておらず、推定も困難な状況にある。
ウクライナをめぐる現在の状況は、原発事故後の道のりが極めて長く、困難なものになることを強く示唆している。