2011年5月27日金曜日

チェルノブイリと違う スリーマイルと似ている 福島の現状

福島第1原発 事故
放射性物質(放射能)が広範囲に拡散し、予断を許さない状況が続く
冷却機能復旧に向けた懸命な作業が進められているが、

大きな被害を出したチェルノブイリ原発事故や
炉心溶融が起きたスリーマイル島の各原発事故と何が違うのか。


事故の特徴、
原子炉タイプや 、
その後の対応などをまとめた。


【 事故の特徴 】
旧ソ連(現ウクライナ)のチェルノブイリ原発
で1986年4月、
試験運転中だった4号炉が制御不能に陥り、
炉心溶融(メルトダウン)の末に爆発した。
火災の上昇気流に乗って大量の放射性物質が拡散、雨などで広範囲に降り注いだ。

【 対応 】
原発から半径30キロ圏内の住民は強制移住させられたが、
事故の影響による死者は少なくとも数千人規模とされる。
原発史上最悪の事故だ。
チェルノブイリでの被害拡大の一因は、10日間続いた火災の上昇気流で、放射性物質を含む「死の灰」がまき散らされたことにある。
国際原子力機関(IAEA)が定める8段階の国際原子力事象評価尺度(INES)で「レベル7」に認定された、

【 原子炉タイプ 】
チェルノブイリの原子炉には格納容器がない。
炉心が圧力容器と格納容器という多重の防護壁で守られた福島第1原発と異なる。
チェルノブイリが引火しやすい黒鉛を使った「黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉」だったのに対し、
福島第1原発は黒鉛を使用しない「沸騰水型軽水炉」で、
「大規模火災が起こる可能性は低い」という。

スリーマイル

では、福島第1原発はどんな道をたどっているのか。
いまだに冷却機能の復旧に至っていないことなどから、
「福島はスリーマイル島原発事故に似た経緯をたどっている」と見る。

福島第1原発と同じ軽水炉の一種である「加圧水型原子炉」を採用するスリーマイル島原発では、
保守作業員のミスなどから、圧力容器内の冷却水が流出。
空だき状態となり、炉心の一部が圧力容器の底に溶け落ちる炉心溶融を起こした。

周辺住民が避難したが、
約16時間後に冷却材のポンプが稼働し、
圧力容器にも損傷は見られなかったことから、
拡散した放射性物質はわずかだったとされる。

経済産業省原子力安全・保安院は、福島第1原発1~3号機の事故が、スリーマイル島事故と同じ「レベル5」にあたるとの暫定的な評価を発表している。

一部で炉心溶融が起きた点は同じだが、東京都を含む広範囲の水や食物から基準値を上回る放射性物質が検出され、いまだに冷却システムも回復していない。
今後、炉心が溶け落ちて水に触れ、水蒸気爆発を起こし、甚大な被害を及ぼす可能性も否定はできないとされる。

拡散した放射線量については「ごく一部の地域を除き、測定値は健康への影響はないとみている」と指摘。
ただ、「冷却システムを早急に回復させないと、作業員たちの体力も限界を超え、技術を持った作業員が足りなくなる恐れがある」と懸念を示した。

2011年5月20日金曜日

海のチェルノブイリ化を防げ

チェルノブイリ原発事故では、土壌汚染が問題になった。

チェルノブイリと福島の違いのひとつは、海だ。
福島原発事故の場合は、土壌汚染だけでなく、海水汚染の問題もある。

東京電力は5月15日、
福島第一原発1号機で、地震発生の16時間後、
メルトダウンの状態にあったことを初めて認めた。

これにより、海のチェルノブイリ化が問題視されている。

汚染水について、懸念の声があがっている。

1号機では圧力容器内で溶融した燃料を冷やすため、
1万トン以上の注水を行ってきたにもかかわらず、
圧力容器や格納容器にたまった水は、その半分にも満たなかった。
13日に作業員が1号機原子炉建屋地下に水があることを目視で確認したが、
その量は約3000トン。
汚染水はどこにいったのか。

汚染水が建屋へ流出し、さらに海に流れていく危険性があるという。その場合、
燃料に含まれる半減期2万年のプルトニウムなどが海を汚染し続け、
海のチェルノブイリともいうべき最悪の事態が現実化する。

建屋からの流出を防ぐことに全力をあげることが望まれる。

汚染水についていえば、建屋地下の水位が20cm以上上昇した3号機でも、
ここ2週間で、建屋やトレンチと呼ばれるトンネルに
高濃度汚染水が2万2000トンたまっていると見られる。
17日午後からこの汚染水を集中廃棄物処理施設に移送し、
水を浄化するシステムをつくり、
汚染水を減少させていくという。

整備されるまでの道のりはまだ遠い。
福島原発の危険はなおつづいている。
海のチェルノブイリ危機もつづく。

チェルノブイリ原発事故の際には、25年後の今なお、原発から半径30キロ圏内での居住が禁止されるほど、土壌が汚染された。


海洋汚染はこれまでほとんど例がない。

海水、海底のほか、海藻や貝類、甲殻類、魚類といった生態系にどれほどの影響を及ぼすか、予想もつかない。

2011年5月11日水曜日

ドイツで150万部 教材になった原発事故小説

原発問題を扱った小説『ディ ヴォルケ』が、ドイツやベルギーの多くの学校では、国語教材として採用されている。
『ディ ヴォルケ』は、原発の危険性について、青少年でもわかりやすいように小説という形で出版された。

ベルギーのドイツ語共同体にある進学校では、多くのドイツの学校と同じように、原発事故を扱った青少年向け小説『ディ ヴォルケ(邦訳題名:みえない雲)』を8年生(日本では中学2年生)の国語教材に使ってきた。
主人公は、学校で原発事故発生の通報を受け、家族を亡くし自らは被曝する14歳の少女で、ちょうど8年生の年齢だからだ。

ドイツだけで150万部以上読まれた小説の著者パウゼヴァングさん(83)は、ドイツ語教師をしながら、絵本から大人向け小説まで92冊を出版してきた女流作家。

パウゼヴァングさんは、チェルノブイリ原発事故以前から、原発事故や放射能被曝症状について、大人だけでなく青少年にも危険性を知る権利があると考えていた。
事故の翌年、青少年でも読みやすいにと小説という形で出版したところ、爆発的に売れた。

88年にドイツ最高の児童文学賞を青少年・家族大臣から受賞して以来、教材に採用する学校が増えただけでなく、原発推進政党の政治家や原子力業界の経営者たちにも読まれるようになったという。
日本を含む13カ国で出版され、06年には映画化もされた。

B000OMD1H8みえない雲 [DVD]
グードルン・パウゼヴァング
ハピネット 2007-05-25


4094081313みえない雲 (小学館文庫)
グードルン パウゼヴァング Gudrun Pausewang
小学館 2006-11

2011年5月3日火曜日

チェルノブイリ原発事故処理に毎年苦しむ国

チェルノブイリ原発事故から25年
ウクライナ(旧ソ連)が、原発事故後の処理に依然として苦しめられている。

被災住民や元作業員への直接的な健康被害や補償だけじゃない。
“原発事故後の処理”に必要な費用が莫大で、ウクライナ経済への深刻な負担になり続けているのだ。

チェルノブイリ原発事故から25年を迎えたことを受け、4月19日、ウクライナの首都キエフで国際会議が開催された。
「原発の処理費用」として、約5億5000万ユーロ(約660億円)が集められた。
原発事故を起こした4号機を覆ったコンクリートの老朽化を受け、資金はそれをさらに覆う巨大な“鉄棺”を建設するために利用される。
「福島原発での事故が、(資金拠出を求める)ウクライナの要求に各国を振り向かせた」とされるが、会議はそもそも7億4000万ユーロ(約890億円)の拠出を目指しており、各国の財政難のなか目標額には至らなかった。

事故を起こした原発の処理や、
被災住民への支援などにかかる費用は、
事故から四半世紀を経た今もウクライナ経済の負担になっている。

ウクライナのアザロフ首相は、事故によるウクライナの経済的損失は2015年までで、1800億ドル(約14兆7000億円)に達するとの見通しを示した。

閉鎖された原発を管理するため、
毎年6000万ドル(約49億円)を拠出。
現在も被災者約221万人が補償金を受け取っている。

原発事故後、拠出額は多い年で、ウクライナの国家予算の実に8~10%を占めていたという。
ウクライナは旧ソ連から独立後、価格自由化や国有企業私有化などの市場経済への移行を推し進めたが混乱。
08年の金融危機では通貨フリブナが暴落し、国際通貨基金(IMF)に資金援助を仰ぐに至った。
チェルノブイリ原発事故の処理がウクライナ経済に極めて重い負担となった。

政府は、事故処理に当たった作業員らへの支援策について、「資金不足」を理由に削減する動きを見せつつある。
ヤヌコビッチ大統領「過去に約束してきた被災者への補償継続は、政府の力を
超えてしまっている」
と語り、政府支援の継続が困難になったことを認めた。

日本では、福島第1原発の事故に対する被害補償額や原発の廃炉費用などの総額は、事故が現在も収束しておらず、推定も困難な状況にある。
ウクライナをめぐる現在の状況は、原発事故後の道のりが極めて長く、困難なものになることを強く示唆している。

2011年4月26日火曜日

チェルノブイリ原発事故から25年後の日

チェルノブイリ原発事故から4月26日 で25年がたつ

原発史上、最悪の惨事となった旧ソ連(現ウクライナ)チェルノブイリ原発事故

ウクライナの首都キエフの教会では、事故が起きた午前1時23分(日本時間同6時23分)、事故処理に当たった生存者の1人が25回にわたり鐘を鳴らして、犠牲者を追悼した。

教会ではこれに先立ってロシア正教のキリル総主教が祈りをささげた。

「世界は、平和な時代に襲ったこの事故に比較しうる惨事を経験したことがなかった」
「他人に生命を 与えるという最も崇高な神への贈り物をした」
と事故処理に当たった人々を改めて悼んだ。

アザロフ首相ら約700人も教会で犠牲者の冥福を祈った。
ロシア西部の飛び地カリーニングラードや、ウクライナ西部の都市リビウではこの日、事故犠牲者の新たな追悼碑が公開される。
ベラルーシでも追悼式典が営まれるほか、各地で「チェルノブイリの教訓」をテーマとする学術会議などが開かれる予定。

福島第1原発事故が発生したこともあり、チェルノブイリ原発事故への関心が再び高まっている。

ロシアのメドベージェフ大統領はこの日、ウクライナのヤヌコビッチ大統領と現地を訪れて犠牲者に哀悼の意をささげる。
キエフで行う首脳会談では福島第1原発の事故を踏まえ、原発の安全性確保などについて議論する見通し。
旧ソ連を構成した独立国家共同体(CIS)の首脳もウクライナを訪れる予定。

事故はチェルノブイリ原発4号機での実験中に発生。
現場から半径30キロ圏内は一般の立ち入りが禁止されている。
国連機関は放射能による死者は将来も含めて4千人と推計している。

2011年3月18日金曜日

チェルノブイリ原発事故にはならない理由

チェルノブイリ原発事故福島原発事故の比較がなされるようになったが、 
福島原発がチェルノブイリ原発のような大事故のようにはならない意見が大半だ。

チェルノブイリと福島の違いは何か。

決定的な違いは、核反応の制御がなされた点。
福島原発は、原子炉の中の核反応はすでに終わっている。
地震と同時に制御棒が挿入されて連鎖反応は止まった。
過熱しているのは核の燃えかすだ。

チェルノブイリ原発事故の場合、
原子炉運転中に核燃料の制御がきかなくなり、核反応が爆発的に進んで超高温になり、原子炉を破壊。結果「死の灰」が噴煙となって成層圏まで立ち昇り、上空の風に乗って半径数百kmに降り注いだ。しかし、
福島原発は核反応は終わっており、核廃棄物の温度も高くないので、拡散する範囲は限られている。

原発とは、
原子炉内で原子核反応時に生成されるエネルギーで水蒸気を発生させ、タービンを回して発電する。
原発の燃料であるウランは、原子炉の中で核分裂してプルトニウムになる。
このとき出るエネルギーで冷却水を熱し、タービンを回し電気をつくるが、
結果、高い放射能をもつプルトニウムを含む放射性廃棄物が出る。
プルトニウムは化学的に安定しているので、核分裂はそれ以上起こらない。
核廃棄物の中には他の核物質も残っているので核反応が少し続いているが、これを冷却水で冷やしていればよい。

福島原発事故の原因は、
原子炉建屋が爆発で破壊され、冷却水を循環させるポンプが動かなくなったことだ。
プルトニウム(放射性廃棄物)の 放射能は、ウラン(核燃料)より高いので危険だが、これが核燃料のように激しい核分裂を起こすことはない。

ただ水が抜けて過熱すると、核分裂が連鎖的に生じる「再臨界」が起こる可能性がある。
放水作業はこれを防ぐためだが、かりに再臨界が起こったとしても、核燃料のように爆発的に反応することはありえないとされる。

今後最大の問題は、原子炉の中心である圧力容器が壊れるかどうかである。
高温の核燃料で破壊され、外側の格納容器の水と爆発的に反応して格納容器も破壊してしまうと、大量の核廃棄物が大気中に放出されるチェルノブイリ型の事故が起こるが、
その確率はきわめて低いとされる。
核燃料の一部が再臨界に達しても、それが圧力容器や格納容器を破壊するほど高温にはならないからだ。
ただ圧力容器の中が高温・高圧になっているため、放射能を含む蒸気を外に逃がす必要があるので、原発の周辺は放射能で汚染される。

原発のまわりは高レベルの放射能を含む蒸気が立ちこめ、周辺は人が住めなくなるが、その範囲はチェルノブイリの半径30kmよりずっと狭い。
農産物などに与える経済的被害は大きいが、周辺住民はすでに退避しているので、人的被害は限定的だ。

チェルノブイリ = 核爆発 = 放射能漏れ
福島 = 核反応停止→冷却機能喪失 = 水蒸気爆発 =放射能漏れ

放射能漏れだけをとって考えるのは良くない。
原因も規模もまるで違うのだ。

原発が「核爆発」することは絶対にないとされる。
核燃料の中のウラン235の濃度は5%程度、原爆の90%よりはるかに低い。